どんなビジネスでも粗利を正確に把握することは決定的に重要になってきます。粗利とは、商品を販売して得た金額から、それらの商品を作るために使用した原材料の費用である原価を引いた金額です。製造スタッフの人件費は、会計処理上は原価に含めるのが普通ですが、ここでは話を分かりやすくするために、製造スタッフの人件費は原価に含まれないものとします。
粗利は、決算の際に売り上げと仕入れ原材料費が数字として明確に出てきますので、年間の全体としての粗利は決算書を見れば正確に把握できます。年に一度明確になる全体としての粗利を把握することで、納得してしまうことが多いのではないかと思います。
全体の数字を把握することはもちろん大事ですが、実はそれだけではまったく不十分で、もっともっと大切なことがあります。それはアイテムごとの粗利を正確に把握することです。
一般的には、原価率が高い商品は、客にとって価値が高く、原価率が低い商品は、客にとって価値が低いと言われていますが、原価率が高い商品でも、客が感じ取る価値が低かったり、原価率が低い商品でも客が感じる価値が高かったりする商品もあります。
洋菓子店には、ショートケーキ、モンブラン、ガトーショコラ、シュークリーム、プリンなど数多くの種類のお菓子が並びます。こにように品揃えに多様性を持たせることが重要になってきますが、それは、粗利についても同じことで、原価率が高い客寄せ的な商品がある一方で、販売数量が多くて原価率が低い商品も必要になってきます。
客を呼び込むための商品、客の日常に寄り添った定番商品、ついで買いを誘うための商品といったように、商品ごとの役割をしっかりと意識することが大切です。そして、それぞれの役割を持たせた商品の最適な原価率を考え、原価率においても、商品の種類ごとにメリハリをつけていくことが重要です。
こうした試行錯誤を繰り返していくうちに、最も利益を生み出すアイテムごとの原価率の配分が浮かび上がってきます。様々な原材料をどのように組み合わせて、各商品に割り当て、各商品の原価率にどのようにしてメリハリをつけていくかによって、その結果としての売上額や利益額は大きく変動してきます。
現状での年間の原材料費が1000万円で、年間の売り上げが3000万円だとしたら、商品ごとの原価率の配分を考え直すだけで、原材料費はそのままで、売り上げを3500万円にすることは十分に可能です。あわよくば4000万円にすることだって、全く不可能だとは言えないでしょう。
このようにして、粗利が上昇すれば、アイテムごとの手間のかけ方、つまり、製造コストの配分の仕方も違ってきますし、全体としてもより多くの手間がかけられるようになり、原価を下げて利益率をあげるのではなく、より多くの手間をかけることで付加価値を上げ、売価を上げることで利益率をアップできるようになります。
それには、まずお菓子のアイテムごとの原価を正確に把握することが不可欠なのです。
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